NISA iDeCo 税メリット 年収別 具体的な計算例と影響
NISA・iDeCoの税メリットはあなたの年収で変わる
資産形成に関心を持つ多くの方が、NISAやiDeCoといった制度について耳にされたことがあるでしょう。これらの制度が「税金がお得になる」と言われることは広く知られていますが、具体的に「いくら」お得になるのかは、ご自身の状況によって大きく異なります。特に、年収はNISAやiDeCoの税メリット額に直接的な影響を与える要素の一つです。
なぜ年収によって税メリットが変わるのでしょうか。そして、ご自身の年収であれば、どれくらいの税制優遇が期待できるのでしょうか。この記事では、NISAとiDeCoの税メリットの仕組みを再確認した上で、年収帯による税メリット額の違いについて、具体的な計算例を交えながら解説します。
NISA・iDeCoの税メリットの仕組み
まず、NISAとiDeCoそれぞれが持つ税制上のメリットについて整理します。
1. iDeCo(個人型確定拠出年金)の税メリット
iDeCoには主に3つの税メリットがあります。
- 掛金全額所得控除: iDeCoに拠出した掛金は、その全額が所得税および住民税の計算において、課税対象となる所得から差し引かれます。これを「所得控除」と呼びます(所得税法第76条第4項、地方税法第34条第1項第2号)。この控除により、課税所得が減少し、結果として支払うべき税金(所得税・住民税)が軽減されます。この軽減額は、掛金額にその方の所得税率と住民税率を合計した税率を乗じることで計算できます。
- 運用益非課税: iDeCoで運用して得られた利益(利息、分配金、売却益など)に対して、通常約20%かかる税金が非課税となります。
- 受け取り時の税制優遇: 積み立てた資産を将来受け取る際にも、一時金として受け取る場合は「退職所得控除」、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」の対象となり、一定額まで税金がかかりません。
このうち、特に毎年の税負担軽減に直結し、年収の影響を大きく受けるのが「掛金全額所得控除」による税メリットです。
2. NISA(少額投資非課税制度)の税メリット
NISA(つみたて投資枠、成長投資枠)には、運用期間中の運用益に対する税メリットがあります。
- 運用益非課税: NISA口座内で購入した金融商品を運用して得られた利益(配当金、分配金、売却益など)が非課税となります(租税特別措置法第9条の8第1項、第9条の8の2第1項など)。通常であれば運用益に対して約20%の税金が課税されますが、NISA口座ではこれが全額非課税となります。
NISAの税メリットは主に運用益にかかる税金が非課税となる点であり、これは直接的には「年収」ではなく「運用成績」によってメリット額が変わります。しかし、iDeCoとの併用や、資産形成全体の視点で見ると、NISAの非課税枠活用も重要な税制優遇となります。
年収と税メリット額の関係:所得控除の影響
iDeCoの掛金所得控除による税メリット額は、掛金額とご自身の所得税率・住民税率の合計によって決まります。日本の所得税は「累進課税制度」を採用しており、課税所得(収入から各種控除を差し引いた後の所得)が増えるほど税率が高くなる仕組みです。
住民税率は一般的に所得に関わらず一律10%(道府県民税4%、市町村民税6%)ですが、所得税率は課税所得に応じて5%から45%まで変動します。
| 課税所得 | 所得税率 | | :------------------ | :------- | | 195万円以下 | 5% | | 195万円超 330万円以下 | 10% | | 330万円超 695万円以下 | 20% | | 695万円超 900万円以下 | 23% | | 900万円超 1800万円以下| 33% | | 1800万円超 4000万円以下| 40% | | 4000万円超 | 45% |
したがって、年収が高くなり、課税所得が増えるにつれて、iDeCoの掛金に対する所得税の軽減額は大きくなります。住民税率10%と合算すると、iDeCoの掛金に対する総合的な税メリット率は、課税所得に応じて約15%から約55%まで変動する可能性があります。
年収帯別の税メリット 計算例
ここでは、特定の年収帯の方がiDeCoに拠出した場合の、所得控除による税メリット額(所得税・住民税の軽減額)の概算例を示します。
【前提条件】 * iDeCoの掛金は、会社員の方が拠出可能な上限額である月額2.3万円(年間27.6万円)とします。 * 表示する年収はあくまで目安であり、実際の課税所得は給与所得控除、社会保険料控除、配偶者控除、扶養控除、医療費控除、生命保険料控除など、個々人の状況によって大きく変動します。以下の計算例は、特定の課税所得を想定した概算であり、実際の税メリット額を保証するものではありません。
計算例1:年収約400万円の場合
この年収帯では、給与所得控除や社会保険料控除などを差し引くと、課税所得が195万円超 330万円以下の区分(所得税率10%)や、場合によっては195万円以下の区分(所得税率5%)となる可能性があります。ここでは、所得税率10%と住民税率10%の合計20%が適用されると仮定します。
- 年間iDeCo掛金: 27.6万円
- 所得控除による税メリット額: 27.6万円 × 20% = 5.52万円
年間5.52万円の税負担軽減が期待できる計算になります。
計算例2:年収約700万円の場合
この年収帯では、課税所得が330万円超 695万円以下の区分(所得税率20%)となる可能性が高いです。ここでは、所得税率20%と住民税率10%の合計30%が適用されると仮定します。
- 年間iDeCo掛金: 27.6万円
- 所得控除による税メリット額: 27.6万円 × 30% = 8.28万円
年間8.28万円の税負担軽減が期待できる計算になります。
計算例3:年収約1,000万円の場合
この年収帯では、課税所得が695万円超 900万円以下の区分(所得税率23%)や900万円超 1800万円以下の区分(所得税率33%)となる可能性があります。ここでは、所得税率33%と住民税率10%の合計43%が適用されると仮定します。
- 年間iDeCo掛金: 27.6万円
- 所得控除による税メリット額: 27.6万円 × 43% = 11.868万円
年間11.8万円を超える税負担軽減が期待できる計算になります。
このように、同じ年間27.6万円のiDeCo掛金でも、年収(ひいては適用される所得税率)によって、税メリット額が大きく異なることがお分かりいただけるかと思います。年収が高い方ほど、iDeCoの所得控除による税メリットの金額は大きくなる傾向があります。
ご自身の正確な税メリットを知るために
上記の計算例は、あくまで特定の課税所得や税率を仮定した概算です。実際の税メリット額を知るためには、ご自身の正確な課税所得を把握し、適用される所得税率を確認する必要があります。課税所得は、給与収入から給与所得控除や社会保険料控除などを差し引いた「所得金額」から、さらに各種所得控除(生命保険料控除、地震保険料控除、住宅借入金等特別控除、医療費控除、扶養控除、配偶者控除など)を差し引いた金額です。
ご自身の正確な課税所得を知るには、源泉徴収票や確定申告書をご確認いただくのが最も確実です。
まとめ:あなたの条件で具体的な税メリットを診断
NISAやiDeCoが強力な税制優遇制度であることは間違いありません。特にiDeCoの所得控除は、毎年の税負担軽減に直結し、そのメリット額は年収(適用される所得税率)によって大きく変動します。年収が高い方ほど、所得控除による税メリット額は大きくなる傾向がありますが、具体的な金額は個々人の課税所得によって異なります。
「自分の年収なら、具体的にどれくらい税金が安くなるのだろう?」
その疑問に答えるためには、ご自身の詳細な条件に基づいた診断が必要です。当サイトの税メリット診断ツールは、あなたの年収や掛金、その他の条件を入力することで、具体的な税メリット額をシミュレーションすることをサポートします。
NISA・iDeCoの税メリットを最大限に活用し、効率的な資産形成を進めるために、ぜひご自身の条件で診断してみてください。